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2025/06/29 07:20
契約書作成eコース>「映画産業の取引設計、契約書作成」のページを更新しました。
(より詳細な記載内容、並びに契約書のひながた・テンプレートは、上記リンク先をご参照下さい。)
映画産業の取引設計、契約書作成
映画は様々な芸術分野の要素を含む為「総合芸術」といわれますが、産業としても著しく発展しています。映画産業はコンテンツ産業の大きな一角を占め、ハリウッドのみならず、各国で大規模化しています。関わるプレーヤーも多数となり、様々な取引・契約が発生しています。
当事務所は、現在の映画産業が必要とする契約書を作成しています。契約書の作成を通じ、取引の設計・コンサルティングを行います。また、映画産業に関連する様々な契約書ひながた(テンプレート)も提供しています。
本ページのコンテンツ
■映画産業の業界構造
■収益分配の流れ
■日本の映画産業の特徴と変化
■日本の映画産業における映画製作(映画製作委員会)
■映画の著作権の帰属:共有とする場合、権利一元化を図る場合
■参考資料
■映画ビジネスの業務と契約
■契約書ひながたダウンロード販売
■契約書や利用規約のオーダーメイド
以下のページもご覧下さい。
原作の利用・使用に関する契約書作成
IPビジネス設計と商品化権ライセンス/使用許諾契約書の作成
著作権の譲渡に関する契約書
イベント、ライブ、フェスティバルのスポンサー(協賛)契約書
コンテンツビジネス、関連産業の契約法務
ショートドラマの取引設計、契約書作成
メタバース・XR業界の取引設計、契約書作成
ゲームビジネスの取引設計、契約書作成
【映画産業の業界構造】
映画産業は、主に「制作」「配給」「興行」の3つの主要な段階で構成されています。近年はこれに「動画配信(VOD)」が加わり、業界構造が多様化しています。
1. 制作(製作会社/制作プロダクション)
映画の企画立案、脚本作成、キャストやスタッフの選定、撮影・編集など、映画そのものを作る役割を担います。
代表的な企業は東宝、東映、松竹、KADOKAWAなど。アニメ分野ではスタジオジブリや東映アニメーションも主要プレーヤーです。
近年は地上波テレビ局や独立系プロダクション、国際共同制作など多様な資金調達・制作体制が増えています。
2. 配給(配給会社)
完成した映画の上映権を買い付け、映画館や動画配信会社に販売します。また、宣伝やマーケティングも担当します。
大手映画会社の系列や、独立系、外資系(ウォルト・ディズニー・ジャパン、ワーナー・ブラザース・ジャパン等)など多様な配給会社が存在します。
近年は広告代理店が宣伝を代行するケースも増えています。
3. 興行(映画館運営会社/興行会社)
映画館を運営し、観客に映画を提供します。観客からの入場料(興行収入)が業界全体の収益の源泉となります。
シネマコンプレックス(複合型映画館)が主流となり、2024年時点で全体の約9割を占めています。
興行会社は配給会社に上映権料を支払い、興行収入の一部を配給会社・制作会社に還元します。
4. 動画配信(VOD)
コロナ禍以降、動画配信サービスの市場が急拡大し、映画館と並ぶ新たな興行・収益の柱となっています。
最新作は映画館で公開後、一定期間を経て配信されるケースが増加しています。
【収益分配の流れ】
1. 観客が映画館で支払う入場料(興行収入)が発生。
2. 興行会社がこの収入から自社の取り分を差し引き、残りを配給会社へ支払い。
3. 配給会社は配給経費・宣伝費を差し引き、残りを制作会社へ支払う。
【日本の映画産業の特徴と変化】
日本の映画産業は、東宝・東映・松竹など大手3社による「垂直統合型」(制作・配給・興行の一体運営)が長らく主流でしたが、1970年代以降は独立系プロダクションや外資系の参入、ミニシアターの台頭など多様化が進んでいます。
洋画の場合は、配給会社が系列映画館を持たず、作品ごとに上映館を契約する「フリー・ブッキング制」が一般的です。
アニメ映画の輸出や、AI・デジタル技術の導入、サステナブルな制作体制の構築など、グローバル化・テクノロジー化も進展しています。
日本の映画産業における映画製作(映画製作委員会)
【映画製作委員会】
日本の映画産業では、映画製作委員会(民法上の任意組合)を組成して映画を製作することが普通です。 しかし、変化の兆しも出てきています。映画製作委員会ではなく有限責任事業組合(LLP)や株式会社をを設立したり、資金調達にクラウドファンディングを利用して映画を製作する事例が出てきています。
事例『かぞくわり』:有限責任事業組合(LLP)を設立、資金調達に購入型クラウドファンディングを利用。 関連クラウドファンドサイト(マクアケ)
【映画の著作権の帰属:共有とする場合、権利一元化を図る場合】
製作委員会方式においては、とくに完成した映画の著作権は、組合員の共有となるのが通常です。
→共有著作権を行使するには、その共有者全員の合意が必要となります(著作権法第65条2項)。いっぽう著作権法は、共有著作権を代表して行使する者を定めることができる旨を規定し(著作権法第64条3項、65条4項)、著作権の円滑な利用を図っています。
→映画製作委員会では、映画の利用に関する各業務の窓口権という形で、代表して行使する者を定めることになります。
著作権の共有
著作権の共有持分は、契約上特に定めない場合は、各共有者が等しい持分であると推定されます(民法250条)。
→著作権の共有割合が契約上特に定められていない場合、映画製作委員会の組合員全員の持分割合が均等になるおそれがありますので、契約にて共有割合を定めます。
→なお、共有著作権の持分割合にかかわらず共有著作権の行使を拒絶することは可能です。
著作権の一元化
一方、民法上の組合契約で、成果物の著作権をあらかじめ1名の組合員に帰属させることも可能です。(すなわち、製作委員会方式においても、権利一元化を図ることは可能です。)
→組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する契約です。組合員間で合意すれば、成果物の著作権の帰属について自由に取り決めることができます。但し、以下の点に注意が必要です。
・組合契約書に、著作権の帰属先を1人の組合員とする旨を明確に規定すること。
・全ての組合員がこの取り決めに同意すること。
・組合外の第三者に対しては、組合として権利行使する可能性があるため、内部関係と外部関係を区別して規定すること。