blog
2025/06/13 12:05
本コンテンツは、契約書作成eコース>「IT・システムの取引設計、契約書・利用規約の作成」からの抜粋になります。
請負契約、準委任契約(成果完成型・履行割合型)
請負契約、準委任契約(履行割合型・成果完成型)
ある契約について、それを請負契約とするか、委任契約/準委任契約とするかは必須の論点ではありませんが、契約交渉の段階で、これらの契約類型をベースとして共通認識を形成し、民法の任意規定をどのように修正するのか、民法に規定のない事項をどのように決めるのかを論点とするのは効率的です。
とくにIT・システムの開発や運用の委託/受託に関する取引では、これらの契約類型をベースとした共通認識の上で契約を締結することが通常となっています。 (もっとも、取引の実務では、どの契約類型なのか判然としないケース、複数の契約類型の性質が混在するケースもあります。)
なお、2020年4月1日施行の改正民法において、準委任契約の類型として「成果完成型」が明文化されました。(民法上、準委任契約には「成果完成型」と「履行割合型」の2つの類型があります。)
請負契約
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約をいいます(民法第632条)。
(1) 業務内容
成果物の完成が義務となります(民法第632条)。また、契約不適合責任を負います(民法第562条乃至第564条、第599条)。
(2) 報酬を請求できる時期 成果物の引渡しと同時となります。但し、物の引渡しを要しないときは、仕事が終わった後に請求することとなります(民法第633条、第624条第1項)。
(3) 再請負
成果物の完成が目的なので、注文者の許諾等がなくとも可能と考えられています。
委任契約、準委任契約
委任契約とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約をいいます(民法第643条)。
法律行為でない事務の委託については、準委任契約となります(民法第656条)。
履行割合型準委任契約
従来から民法で明文化されていた準委任契約は「履行割合型」といわれ、業務にかかった工数や作業時間、進捗率に応じて報酬が支払われる点に特徴があります。
(1) 業務内容
委任事務を処理する際に善管注意義務は負います(民法第644条)。但し、請負契約のように、成果物の完成義務までは負いません。
(2) 報酬を請求できる時期(有償の場合)
委任事務を履行した後でなければ請求することができませんが、期間によって報酬を定めたときは、その期間を経過した後に請求することができます(民法第648条第2項、第624条第2項)。
(3) 再委任
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(再委任できません)(民法第644条の2)。
成果完成型準委任契約
成果物の納品が報酬支払いの条件となる点で、履行割合型準委任契約と異なります。但し、請負契約のように、成果物の完成義務までは負いません。
(1) 業務内容
委任事務を処理する際に善管注意義務は負います(民法第644条)。但し、請負契約のように、成果物の完成義務までは負いません。
(2) 報酬を請求できる時期(有償の場合)
委任事務を履行した後でなければ請求することができません(民法第648条第2項)。
(3) 再委任
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(再委任できません)(民法第644条の2)。
各契約類型の典型的な適用場面
請負契約、準委任契約(履行割合型・成果完成型)それぞれの契約類型における上記の性質を認識した上で、これらをベースとして実際の取引・契約を組み立てるのが効率的となります。
履行割合型準委任契約
→コンサルティングや調査等で、仕様が流動的なプロジェクトに関する業務。
成果完成型準委任契約
→コンサルティング、システム保守、マーケティング施策の立案等で、成果物の納品はあっても、柔軟な対応や途中変更が想定される業務。
請負契約
→建設工事、ソフトウェア開発、デザイン制作等で、明確な成果物の完成が求められる業務。
------
→本コンテンツは、「IT・システムの取引設計、契約書・利用規約の作成」からの抜粋になります。その他の記載内容、並びに契約書のひながた・テンプレートは、こちらのリンク先をご参照下さい。