blog
2024/10/25 20:43
契約書作成eコース>「アートビジネス 芸術家とギャラリーの契約書」のページを更新しました。
アートビジネス 芸術家とギャラリーの契約書
【当事務所は、アートビジネスの支援・契約法務に取り組んでいます】
神戸アートマルシェのお手伝いをしています。
(一般社団法人神戸芸術振興協会)
神戸アートマルシェ2025 開催日程/出展者募集のお知らせ
KOBE ART MARCHÉ 2025 開催日程について
16回目の「KOBE ART MARCHÉ 2025」を、2025年5月16日(金)〜18日(日)の3日間、神戸メリケンパークオリエンタルホテルにて開催いたします。
《開催概要》
日時:2025年5月16日(金)〜18日(日)
会場:神戸メリケンパークオリエンタルホテル 7F
主催:一般社団法人神戸芸術振興協会
《KOBE ART MARCHÉ 2025 出展申込締切:2024年12月8日(日)》
出展希望の方は、神戸アートマルシェ公式サイトより募集要項をご一読の上、出展申込フォームにご回答下さい。皆様のご出展を、心よりお待ち申し上げます。
役職:一般社団法人神戸芸術振興協会 代表理事
メディア・アート・音楽・クリエイティブの総合支援オフィス、オカダオフィスを開設(2012年4月〜)。各種アートマネジメント活動を行っています。
【変貌を遂げるアートビジネス】
現代アートを取り巻く状況・マーケットは大きく変貌を遂げ、様々な分野のビジネスとのコラボレーションが進んでいます。 アートギャラリー側にも、芸術作品の展示場所をアーティストに貸し出して提供する機能(いわゆる『貸画廊・レンタルギャラリー』としての機能)の他、アーティスト(芸術家)を発掘し、さらには売り出していく為、展覧会の企画等の様々な活動を行う機能(いわゆる『企画画廊・コマーシャルギャラリー』としての機能)が求められています。
【アーティストの代理人(エージェント)としての企画画廊】
現在、このような企画画廊には、アーティストの代理人(エージェント)的な機能も求められてきています。 すなわち、アーティストの各種メディアへの出演・プロモーション・スポンサー獲得・芸術作品の複製物又はアーティスト自身の肖像等の利用許諾など様々な活動を、 アーティストを代理し、窓口として、第三者と契約の締結・交渉・折衝・協議・事務連絡・その他調整行為等の業務を行う機能が求められてきています。
エージェント的機能という観点からみれば、このようなアーティストとギャラリーの関係は、 タレントと芸能プロダクションの関係又はスポーツ選手とマネジメント会社の関係に類似するといえるかもしれません。
【アートギャラリーが手掛ける店舗プロデュース・街づくり】
アートギャラリーは、芸術作品の紹介・展示・販売のみを業務としているところが多いのですが、 最近は、その専門性を店舗プロデュース・街づくりなどの業務に展開するところも出てきました。 これらのアートギャラリーは、得意とする芸術分野、芸術家・芸術系大学などとのネットワークを いかし、他では考えられないユニークな仕事をクライアントに提供しています。
【用語】
貸画廊 Rental Gallery
画商 / ギャラリスト Art Dealer / Gallerist
学芸員 / キュレーター Curator
商品性 / コモディフィケーション Commodification
大日本印刷株式会社『現代美術用語辞典』 artscape(アートスケープ)より
〜アートビジネスに関連する契約書ひながたは、「アートビジネス 芸術家とギャラリーの契約書」のページをご覧ください〜
アーティストとギャラリー間の契約における注意点
【契約書を取り交わしましょう】
アーティスト(芸術家)とギャラリー(画廊)は、芸術作品の販売活動等を行う場合、契約書を取り交わすことなく、互いの信頼関係に基づき取引していることが多いとききます。 しかしこれでは、アーティストとギャラリー間でどのような約束事をしたのかが不明確となり、トラブルになることも多いです。
【ギャラリーが行う業務により、契約書の内容も変わります】
アーティストとギャラリー間の契約書の内容は、ひとつの芸術作品(アート作品)の販売を目的としたシンプルな販売委託契約から、複数の芸術作品の保管・展示・販売を目的とした継続的取引の基本となる契約、さらにはギャラリーがアーティストの代理人(エージェント)たる権限を与えられ、様々な営業・契約交渉等の活動を行う為のマネジメント契約まで、ギャラリーが行う業務により、様々に変化します。
【アーティスト側からみた注意点】
アーティストと画廊との出会いはとても重要です。
現状の日本のアート業界では、企画画廊で一度展覧会を開催すると、契約書を交わさずとも『その企画画廊の息がかかっているアーティスト』という、業界内の暗黙の了解ができることもあるようです。アーティスト側からしてみれば、その企画画廊と信頼関係ができれば、面倒なことを言わずとも育ててくれる?というメリットがあります。しかし一方で、他の画廊から声がかかり難くなったり、了解をとらずに他の画廊で展覧会を開催することが難しくなるというデメリットを感じるかもしれません。
(アーティストとギャラリーは、上記のような問題については、話し合いのみで済ませることなく、業務委託内容を契約書にきっちり記載して取り交わすことをお勧めします。アートをビジネスにしようとするなら、人間関係に頼る牧歌的な仕事のやり方は、現在ではもう通用しません。アート以外のビジネスとのコラボレーションが進んでいく現在の状況下においては、仕事のやり方も変えていく必要があります。音楽業界、芸能界など他のエンターテインメントビジネスと同様に・・・)
以下、アーティスト側からの視点で注意点をいくつか記しますが、これらは、ギャラリー(画廊)側の注意点と表裏一体をなすものです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アーティスト側からみたギャラリーとの契約の注意点は、ギャラリーに対し、ギャラリーの販売能力を超えるような範囲の権利を与えないことです。これは、ギャラリーに委任する業務内容、与える権利等の範囲を注意深く吟味する必要があることを意味します。また、ギャラリー側が芸術作品を保管・所持する場合の、盗難・紛失・損傷・修理等についての責任についても吟味する必要があります。
アーティストが直面する危機のひとつとして、ギャラリーの破産があります。ギャラリーが破産すれば、債権者はギャラリーに託された芸術作品を差し押さえようとするかもしれません。 このような債権者の動きについては、契約書を取り交わすまでもなくアーティストが法律で守られる部分もありますが、いずれにしろ、たとえギャラリーが破産しても自己の芸術作品にかかる権利を保全する為の担保を得ておくことが望まれます。
芸術作品を購入して頂いた顧客の連絡先を把握しておくことも重要です。連絡先を把握していなかった場合、販売された芸術作品については、回顧展はおろか、写真を撮影することもほぼ不可能となります。しかしギャラリー側からすれば、アーティストが顧客の連絡先を知ると、アーティストが芸術作品を顧客に直接販売する可能性が出てくるので抵抗があるかもしれません。従って、ギャラリー側からすれば「必ずギャラリーを通して販売する」ことを契約で定めておくのが重要となるでしょう。別の解決策のひとつとしては、(現実的であるかどうかはともかく)、中立的な第三者が顧客の連絡先等の情報を保有し、回顧展などを開催する際に、顧客に連絡できるようにしておくことです。
アーティストがギャラリーで個展を開催する場合、費用負担や個展終了後の物品の帰属を明確にしておくことも必要です。例えば、個展の為に用意した額縁・フレーム等を、個展終了後もアーティストが所有したい場合は、それらに関する費用は、最終的にはギャラリーではなくアーティストが負担すべきでしょう。
アーティストは、あまりに長い期間、同一内容の契約で縛られるべきでもないでしょう。アーティストにとって適当な期間というのは、『審美眼と財政的成功を手にするだけの成長に必要な期間』です。ギャラリーと付き合う場合は、相性が良く互いに伸びていける関係を長く保つことができるギャラリーであればベストです。ギャラリー側からしてみても、見込みのあるアーティストとは、できるだけ長期間付き合いたいと考えるでしょう。
ただ、こうした場合でも、契約内容は定期的に見直していくことが必要です。ひとつの方法は、契約に1年もしくは2年といった有効期間を設けることでしょう。
ギャラリーは、大きな成功をしたアーティストに対しては、引き留める為に、売り上げとは関係のない固定給的な報酬(契約金)を毎月支払うかもしれません。ただし、契約内容によっては、売り上げが出たときに、この固定給的な報酬に相当する額が控除されるかもしれません。また、売り上げが出ない場合、代わりに芸術作品をギャラリーに譲渡するようになっているかもしれません。もしギャラリーがそのアーティストの芸術作品をあまりに多く保有した場合、ギャラリーは、アーティストが今売りたい芸術作品ではなく、まずはそれらの在庫品を処分したがるでしょう。
アーティストによっては、作品の種類、地域、その他の独占的な諸権利ごとに、複数のギャラリー等と制作活動をしたいでしょう。これは、一貫性のある複数の契約を、複数のギャラリー等と交わすことを意味します。あるいは、窓口となるひとつのギャラリーが、アーティストの代理人(エージェント)となって他のギャラリー等と契約する形式もあるでしょう。この場合、窓口となるギャラリーは、アーティストから代理人たる権限を契約により得ておく必要があります。
アーティストはまた、ギャラリーを持たないアートディーラー、画商、キュレーター等と付き合うこともあるでしょう。彼らと契約をする場合も、ギャラリーと契約する場合と同様の注意を払う必要があります。
アーティスト/芸術家の移籍に関する契約書
アーティスト/芸術家の移籍には、単に移籍元アートギャラリーから移籍先アートギャラリーに所属を変えるだけの場合もありますが、資産や負債の譲渡をともなう移籍だったり、所属するアートギャラリーをまるごと売却・買収する パターンの移籍だったりすることもあります。(事業譲渡、M&Aの取引と内容が近い移籍もあります。)
ご参考:事業譲渡契約書、営業譲渡契約書
アーティスト/芸術家の移籍にともない、少なくとも以下の契約書が必要となります。
・移籍元アートギャラリーと移籍先アートギャラリーの間で締結する移籍契約書
・移籍元アートギャラリーとアーティスト/芸術家の間で締結する移籍契約書
・アーティスト/芸術家と移籍先アートギャラリーの間で締結するマネジメント契約書
契約当事者間においては、少なくとも以下について取り決める必要があります。
・移籍時期
・移籍金
・IP(Intellectual Properties:知的財産)の取扱い
→アーティスト/芸術家が移籍元アートギャラリーに所属していた期間に創作されたIPについては、前提として「移籍後も移籍元アートギャラリーに帰属させる」のか、それとも「移籍にともない移籍先アートギャラリーに譲渡する」のかを取り決める必要があります。
→アーティスト/芸術家のSNSアカウント(YouTube, Instagram, X(旧Twitter), TikTok, etc.)については、それが移籍元アートギャラリーでどのように取扱われていたかを鑑みて、移籍にともなう取扱いの変更を取り決める必要があります。
→いずれにしましても、移籍するアーティスト/芸術家の芸術活動を制限するような取り決めを行うと、独占禁止法などの法令を違反する可能性が出てきますので、注意が必要です。
当事務所は、所属アートギャラリーとアーティスト/芸術家の間で発生する様々な契約内容に対応し、取引の設計・コンサルティング、契約書・規約作成、業務提携プロデュースに取り組んでいます。